演習2 07年度本試験 浅沼圭司「読書について」
’00年代の出題傾向と、今年出そうな読解戦略

 ブログ始めましてから初めまして。zohoからこちらに移行を進める一環として、こちらの方から先行で記事を出していきます。
 地味にHTMLの流儀を学習していかなければならなくて負担もそれなりにあるのですが、年度後半にそういう技術的障壁を残してしまうわけにいかないので、日々精進です。
 2007年度「読書について」の読みの戦略のほんの序の口のところをコメントしておきます。

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 PBL(課題解決学習)が流行り始めるのは、「ゆとり世代」の出だしのころ、「総合的な学習」がまだ理想を持って語られていた頃からだと思います。簡単に言って2000年あたりから、「エリートは自分の力で調べて考えるものだ」という期待を持って、ほとんど手加減なしで大学側が出題してくるという傾向が現れてくるわけです。
 すでに学習し、割と近いところでこないだも出題された2003年度入試「霊の目」もそんな流れの中にありますが、この00年代の出題というのは、他の年度の本試験を見ても容赦がありません。ここ数年の傾向と対策から、私としてもちょっと考えて、まずは、今や大学内にも浸透したであろうロジカルシンキングを重視した文章で、「議論、考えのとっかかりが『わずかには存在する』から、勘のいい受験生がそこから理解を組み立てていってくれないかな」という、「難しいけどきっかけはある」というパターンの過去問をやっていこうと考えているところです。

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 それで、ここで端的に戦略をまとめておきますと:

「具体例・引用が多い間は、筆者の述べることばの方向もまだ固まっていないものだ」

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「だから、『具体例・引用がどこに向かおうとしているか(詳しくなっていく方向性)』から『筆者の議論の立ち位置』を読んでしまおう」

 という、たいへんチートで行儀の悪い読み方の練習を、ここできちんと行っておきたい、ということです。

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 これは「K塾オープンの出題する無理難題(exが無駄に多い)」への対策を兼ねつつ、S台も見据えている今後の大学入試のロジカルシンキング的な方向性をさらに「タケトミも出題の蓋然性が高いと睨んでいる傾向で」学習する、という、たいへんオイシイ、無駄の少ない演習内容の選定だ、と言えるでしょう。

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 ここから2007年度のテキスト自体をおおまかに噛み砕いていくとすると、

① 最後の方の具体例から、『より原始的感覚的な方向で芸術を今後も論じていこう』というメッセージの方向性を先に読み取る
② 文章前半から、過去(近代)と現代について、表面的に現れる芸術の違い(過去に『ジャンル』が重視されたことと、現在『理論』が重視されたこと)のなかの「論拠の構成」をきっちり読む
③ 文章後半で②の「論拠」たちが、筆者によってどのように『(論拠の)再構成・再構築』を提案されるかを読み取る

 というような流れになるでしょうか。

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 特に作業①(exからの本文後半の展開の先取り)がなければ、文章前半が理屈っぽくて読めない人が続出するはずです。今回の場合disり文脈に頼る余地もほとんどないので、代わりに使える読解の足場というとこの作業①になってしまうのではないでしょうか。
 しかし作業③にあるように、そのうえで「筆者がどのように既存の理屈・ロジックを修正するのか」を記述説明することが求められているのが、東大本試験の「肝」の部分だと思います。K塾の設問のように「結論さえ読めればいい(K塾が読めているとは言っていない)」というものではないのです。
 じつは、京大を受験する生徒の少ない関東では、「テーマ(専門家・学者の持っている常識)をつかんで、それをある程度本や授業から読んで識っていればok」みたいな俗な考え方が横行しているのですが、しかしながらこのアクティブラーニングや課題解決型学習、ロジカルシンキングの流れは、そうした知識偏重のものとも違う、「受験生なりにその場で本文の論点を考えてもらう即興的な試練」なのです。

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 非常にざっくりと2000年以降の「高難度の読み取りの戦略」を出現頻度の順に挙げるとすると、

1.disり文脈の串刺しして解消し、論点や求められる方向性を定めていくパターン
2.複数の〈r〉グループについて本文全体から読み取り、かつ〈R〉など他の比喩グループとの相互関係を読んでいくパターン

(〈r〉と〈R〉の関係式=テーマの中の論理関係 なので、最終的に本文趣旨と論理展開がわかる)
3.ひたすら言語的な論理力を問うてくるパターン(本文は短いけれど、とにかく論拠の展開、関わり合いを必死に・正確に読むしかない)
4.それなりにバラけた複数の(ex)をグルーピングする中で、グループごとの発想の論拠を比較対照するパターン

と、だいたいこのようになるでしょうか。K塾はこの4番の傾向の文章を好んで出しつつも、なぜか論拠の読みではだいぶ失敗や誤解をしている、というのがだいたいの傾向ですね。

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 正直言えば、右の1番の解法についてもまだ君たちは練度が足りていないはずです(高校現代文テキストの『モンテーニュ再読』覚えていますか? あの難易度でも入試レベルとしてはまだ「標準」ですよ)が、できればこの夏の段階で、「K塾よりも上手に4番の戦略で解く」ようになってほしいと思います。メンタルでブレるのでなければ、本気で論理力を上げていくのは受験直前の方がずっと伸びしろが大きいですから、解法1や解法3の錬成は年度の後の方が適していると思います。

 正直いって、こういう「チートスキルの傾向と対策」をいま現在授業の演習のなかで君たちが教わっているかどうか私は把握していないのですが、どうか私のこのオンラインの読解演習に付き合ってくれて、読解の戦略について技術力を実戦レベルまで上げてくれないかなぁ、と切に願います。

 君たちと出会えたこの縁に感謝しつつ、僕もスキルアップに励みます。環境構築のためちょっとスケジュールがずれ込んでますが、きっちりやりたいと思っていますので、どうぞ一緒に頑張ってください。


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