【お便りコーナー】京大阪大の入試問題についての解き方対策あれこれ②
(今年はどんなテーマが出るだろうか)

 いただいた相談の続きです。

 阪大の出題テーマについては、前の記事に述べたような「論拠の迷路、論文解析型の文章が出る」ということで十分だと思います。正直いって阪大のテーマは内容自体が難しいので、これまでの教材の復習で難解だったテーマを可能なかぎり振り返っておくことをおすすめします。あとは20字40字単位の端的な要点抜き出しと伏線把握ですね。この辺は全国模試対策と大量にカブっているので、皆さんのスジがいいかどうか=阪大入試の合否を分ける基礎得点の有無については、記述以前のところの復習や自己努力にかかっています。

 この記事で扱いたいのは、京都大学の出題テーマについてです。なぜならそれは、長文記述という出題の枠組み自体に関係する話であるからです。

Q2:

あと、先生の今年の予想も聞きたいです。 どんなテーマに重点を置いて勉強すればいいと思いますか?

A:

「京都で一体何が出るか」については、長らく答えを出せないでいました。それは「文理共通第1問」「文系第2問」「理系第2問」をまたいで、小説、随筆、論説文、歴史的な資料など幅広いジャンルから不意打ちで出題されるからです。そうした「出題されるジャンル」については、正直言っていまも確かなことは全くわかりません。

 ただ、それぞれの大問ごとにどういう記述解答を書けばよいのか、書くことを求められているのかは決まっているように思います。大量に記述することを要求される当大学の入試においては、こちらの方が重要ですね。
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 以下、簡単に述べますと、
〔第一問 文理共通問題〕
・一つ、もしくは呼応する二つの〈レトリック〉および「論拠①(定義、前提条件)」が、本文中のテーマの解釈を分ける。
・それぞれの傍線部や設問が、どちら側の解釈にたった主張なのかがあいまいで、受験生側に読解力が要請される。
・本文自体が解釈や寓意を使い分けている以上、受験生には3、4行の記述解答の段階から「自分がどの観点、解釈によって、どういう点や根拠で□□を◎◎とみなす」ということを要求される。
・事実関係の読解や解釈が主眼であるから、とにかくそれぞれの解答要素をわかりやすく端的に書く。
・二つの〈r〉、二つの定義解釈の際には、意味段落で分けられるように〝見える〟し、ある程度はそれで説明も書ける。その一方で、離れた箇所の同じ論拠や同じ象徴対象を関連づけられず、踏み込みの甘い説明や、背景を無視して皮肉や含みに気がつかない、結論部まできて誤読するといった失敗のリスクを伴う。

 
〔第二問 文理別問題(理系)〕
「言葉や言語に置き換えることの難しさ」が基本的な出題テーマ。具体的な話題についてもある程度準備すれば対応できるくらいのバリエーションしかないが、物理現象や科学の考察というよりは文字や言葉に置き換えた後のことを議論する感じ。
・論じる対象となる具体的な現象、問題をきちんと読み取れているか、指し示せるかを受験生に問いかける。
・その指示対象に対してどういう解釈や対処がありえるのかについて、二者間三者間の違いを比較対照する説明力を問う。
・理系の分野からだいぶ離れたところにおいて、受験生が持っている「理論として通るような論理的な説明、論拠の組み立てをする力」を問う。

 
〔第二問 文理別問題(文系)〕
文系研究者として扱うべき資料形態を幅広く出題する。
・ただし時勢に媚びたテーマは極めてまれ。あくまで一般人が読めない、読まなさそうな文章を出題範囲として選ぶ。
・漢文訓読体や古文の文体への素早い対応力、読解力がとわれることもあるし、筆者が何したいかわからないテーマの随筆、自伝小説もあるが、基本的にはワンイシューの文章で、筆者、作者のいうところを論述できるか。
・「結局は●●なので◎◎」という「結論とその論拠」を見つけられるかどうかが合否を分けるような全体解答率になっている。論点をどうやって見つけるかは、exやrなどのチートスキルを持っていたほうが圧倒的有利。

 

 以上です。

 ここから導けることは「解答要素として書くべきものの『書き方』は、それぞれ事前に自主練ができる」ということです。予備校が多用する「A・・・だがB・・・」「A・・・ではなくB・・・」にはミジンコくらいの配点は間違いなくあるのですが、入試を担当する京大の文学部の先生たちが毎年全学部の受験生にどういう力を問うているのかということを冷静に考えたならば、それと同じ程度の配点が課された項目はゴロゴロしているのがわかるでしょう。

 なに、分かりませんか? だとしたら、それは受験の雰囲気に呑み込まれているのですよ。

 SGHやSSH、ディベートやグループワークのときに相手に伝えた要素を、試験を通じてうまく論述につながるようにまとめるだけの話です。あなたたちであれば、すでに似たようなことはたくさん行ってきているはずです。それを自分の責任として、たかだか120〜210字の文章にして世に出したことがないから、無駄に悩んだり畏れたりしているだけです。

 記述解答について、念入りな準備を行いましょう。応援しています。またなにか相談があれば、メールで送ってください。

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