2016年第1問「反知性主義者たちの肖像」③
批評的思考 「筆者の立ち位置」把握した瞬間、何が起こるか?

 2016年度第1問の続き、さらに劇的に読めるようになるテクニックです。
 試行錯誤して膨大な時間を消耗する「論点の整理と論拠の集約」について、どういう方針で最初に何を行うか?についてのお話です。

 クリティカルシンキング(批評的な思考)という意味では、筆者が話を組み立てる方向性に対して、情報や主張はどのように配置されて結果的にどういう理屈になっているかを、脚色を加えず、でも無駄や曖昧さは省きつつ、記述説明しなければいけません。

 旧世代にはなじみの薄い「課題解決学習型」の出題であるだけで、教育関係者やいわゆる「真面目、従順」な受験生たちにじゅうぶんに大きな混乱を与えているというのに、この年度の文章の場合、前提であるはずの論拠(きわめて排他的な「知性」についての定義)を後出しすることによって、読む側だけでなく筆者自身も話の運びかたについて多少混乱してしまっているところが、解きにくさに拍車を掛けているように思います。

 この文章は特に、「筆者がどういう立ち位置で」「議論がどこから始まっているか」が明確には分かりにくい。特に筆者が語る語り口のとおりに意味段落で区切るような伝統的な読み方では、問5百二十字記述では、筆者の皮肉や悪意に気がつかず、「後ろの意味段落」をただ表面的になぞるだけとなってしまっています。国立上位の大学の模範解答には各予備校のプライドが多少なりともかかるところなのに、この年度の解答は各社ともかなりの荒れ模様です。

 「どうやって論点を整理して論拠を集約するか」について、明確な方針と具体的な作業が必要なのです。

 私にとっても、オンラインの限られた機会で十分に伝わる平易なやり方を解説するために、現状では字数も推敲の手間もかかってしまいもどかしさを感じています。ここでは解答の組み立て、アウトプットに直接的に関わるところである「筆者の立ち位置のつかみかた」「論拠を2行解答のなかに盛り込むさいに気を付けるべきポイント」に割り切って、ある程度お話しできたらと思います。

2016年度第1問 内田 樹「反知性主義者たちの肖像」:
 ・筆者の立ち位置を確認するタイミングはいつか
 ・筆者自身の論拠の飛躍にどのように対処すべきか
 ・省けないはずの論拠をどうコンパクトに読み込んで記述するか

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