2013年度東京大学第1問 湯浅博雄『ランボーの詩の翻訳について』に関連して、この6月考査前の学習を通じてしっかり仕上げてもらいたいことについてコメント
2013年度第1問『ランボーの詩の翻訳について』」:
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【解説】2013年度東京大学第1問湯浅博雄『ランボーの詩の翻訳について』浄書版
【解説】東京大学2013年第1問_湯浅博雄_『ランボーの詩の翻訳について』解答要素と予備校3社模範解答
※最初のリンク「浄書版」は、「最初に読むさいにどこに着目すべきか」について見えやすいように書き直したものです。ディスり構文を攻略するには、こちらをまず見るのが良いでしょう。
※2番目のリンクは、2行3要素60字を書くときに考慮すべき解答要素をリストアップしたもの、および予備校3社の模範解答を掲載したPDFです。記述解答を書いた後、書き直しの際に熟読してください。
あと2回のうちの1回とは言え、先生が替わって最初の定期考査です。青木先生も君たちの絶対的な実力を測る必要がありますから、大きな目で見ればはっきりした枠組みを持ちながらも、言語的な論理力を問う部分を含んだ過去問(割と出題されるとやっかい)を教材として扱っていらっしゃるように思います。おそらく多くの人には後者の「論理力の必要な読み取りと書き取り」が試練として立ちはだかっていると思いますが、学習が後手に回ってしまっている人には、前者の「文章の枠組みに対して見通しを立てる」という作業についても、メンタル的な負担と授業の傾向が変わった当惑からあらためて困難を感じているところかもしれません。
実際にこの文章では、前半に厭な感じのディスり構文が頻発します。それは「ともすると〇〇だ。しかし…してはいけない。なぜなら――」という形式のディスり構文です。
この形式は、読み慣れていないと精神的にかなり消耗していきます。「しかし・ではなく」の後の主張の部分に具体性がほとんどないため、後の段落に出てくるディスり構文と内容を同じだと見比べて、見定めていくのがより一層困難になるからです。
またさらには「してはいけない」と禁止するだけの理由や事情の説明が、いちいち論拠としてその場所にくどくど書かれることも多く、先が見えないのに理屈を述べられるために、見通しの悪いなかで思考力だけが消耗させられていくという悪い点もあります。
東大の現行第1問現代文には、かつてより問題文の文章が長くなったぶん、「読む戦略さえあれば、本文の半分は読み飛ばせる」という傾向がほとんどの年度で見て取れます。ですから今回みたいな「消耗させられる度合いが激しい文章の組み立てに対する対処法」をはっきりと意識しておくことで、毎年の傾向と対策の変化に慌てふためく度合いが減ってくることと思います。
【ポイント】
・この文章は、最強・最恐のディスり構文「一見◯◯だ、しかし××はしてはいけない、▲▲だからだ」の連続を解消しなければならないという意味で、非常に対策しがいのある教材です。
→「じゃぁどうせいっちゅうの」のところ(=6・7段落の「べきだ」の内容)
本文の先のほうに目を移すことができれば勝ち。
※ただし、ネガティブ発言××にも論拠▲▲が付随しているので、論理的に正しくまとめること。
同じ理屈は集約し、関連するものは因果や条件関係に忠実に関連付け
1段落後半の前提条件=7段落の理由
:「作品、テクストの志向する内容は、表現する仕方・形態の特異性と一体として作用する」
↓
ex2の前の悪い因果関係(4段落)+ ex2の後の対策(6段落)
:「抽出した理解による意訳はむしろ翻訳者の言語作品という面が大きくなるので、原文の表現の仕方の側面に忠実であるべき」
‖
8段落「こうして」によるまとめ、「翻訳者の二つの任務」の②番目
(①達意の自国語に翻訳するためにも、②原文の形態・言葉遣いを尊重)
※ex2がex3、4と対置させられていることに注意
(exのグループ分けはシンプルではあるが、付随する論拠に要注意)
ex2(=②原文の言葉を尊重しない、①達意の自国語への翻訳)
vs
ex3、4(=②原文の言葉と8・9段落の論拠のまとめ)
ex3(原作の表現形態・意味を表す仕方を自国語の枠組に取り込む)
↓ex4(それが絶えず無限に行われれば、翻訳作品たちに対して自国における新たな生命を与えるたびに、和合の中で自国語に絶えず新しい枠組みや規範がもたらされ続ける)
蓋を開けてみれば、この文章はex間の関係も単純で、論拠の数も少なく易しい文章だということができるかもしれません。この年の解答速報のさいには、どの予備校も「標準、やや易」と評価していたと思います。
言語や文化交流というテーマは、今後の皆さんの就職や人生の活動の場所を決めていく大切な一歩になるかもしれませんし、分かりやすいところから興味関心を開拓してテーマ理解を深めていくこともできるでしょう。その方向から知識を深める対策も必要かもしれません。
ただ、超高校級の文化論が文章の前半まるごと理屈を付けながらずっとツンツンしているのだから、対策を練っておかねば難しく感じるに決まっています。ディスり構文は要するに悪文の典型なのだから、同様の悪文に二度とやられないように対策を練っておくべきです。現行第1問の現代文はそうした「読みこなす要領の良さ」を確実に毎年傾向を変えながら受験生に要求していますので、まずはそうした意味で、この文章にウンザリさせられないような対策をぜひとも練習するようにお願いします。
【解説】東京大学2013年第1問_湯浅博雄_『ランボーの詩の翻訳について』解答要素と予備校3社模範解答
二つ目のPDFの後半のページにある予備校3社の模範解答の要素の組み立てに、論拠の集約という面での粗さが見られますが、とりあえず皆さんに考えてもらう課題と言うことにして、本日の記事はおしまいにします。
文化論というテーマに落とし込むと、大人にとってはどこかで読んだような文章なのですが、本文の構成を考えると以下の部分について予備校の模範解答には「筆者である湯浅博雄さんがその独特な説得の仕方によって、極めて微妙なやり方で告げようとしている何か」から目を背けた跡が残っているように思えて仕方がないのです。
ということで、以下の課題について考えてください。
課題その1:問1と問2は本来ならば関連した設問です。それはどのような点で関連していると言えますか。そしてその詳細が述べられているのは何段落ですか。
課題その2:後発で模範解を公開するT進だけが、問2を別の答え方で解答しており評価できます。問2の解答に「翻訳者の創作」という言葉を入れてはいけません(文中には一言も創作とは書かれていません)。問2でほんとうに危惧すべき危険性とはどのようなことですか。
課題その3:問4と問5百二十字記述の内容(10段落、11段落)は、どのようなことを前提に仮定・期待・推測されていますか。それを念頭に置いて、各予備校の問3の解答を書き直しなさい。
課題その4:であるならば、百二十字記述において、「翻訳という営みが複数の言語や文化の間で広く行われる(=横断する)こと」によってどのようなことが起こることを想定しておかねばなりませんか。10段落、11段落前半から語句を見つくろって、8段落のキーワード「和合、調和(ハーモニー)」と関連付けて答えなさい。(この内容が、傍線部オのいう「言語文化的差異のあいだを媒介すること」にあたります。この媒介・横断こそが「ハーモニー」なのです)
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