【お便りコーナー】本試験の解き方どうすればいいですか③
記述解答の組み立てかた【前編】

 駿台や河合塾が先生たち向けに開講する夏の講習の期間がやってきています。
 横浜の桐蔭学園にいたあいだは、教科ごとに学校からの参加割り当てもあってよく受講していました。皆さんも人生の大事な「はざかい」の時期ですが、この時期になると教員も、時間を見てレベルアップしていかなければならないなと思います。
 青木先生は駿台の校舎を飛び回り各大学の実戦模試の採点業務にも関わっていらっしゃるので、絶えず情報の共有やアップデートを毎年毎月の現実のお仕事としてされているところだと思います。
 私の場合は、グーグルの支援するウェブアプリ開発のエコシステムにまず乗ることが当面の目標ですね。現代文という、ハッタリが跳梁跋扈し、真面目に指導や添削すると身が持たないような分野に、きちんとした傾向分析と顧客(国語の成績向上を目指して利用する生徒)の獲得をしていくことで、「お前のそれは主観だ」と罵られることなく、腰をすえて自分の教材を展開する環境を作っていきたいと思っています。

 なんの話か? 今日のこの記事は「本試験 記述解答の〝書きかた〟」についてです。

 
東大現代文 記述の組み立てはどうしますか【前編】:
☆☆ここから先は会員専用ページです。⇩ ログインしてください ⇩ ☆☆

[if-login]

 演習教材の断片から見たところでは、現在の青木先生の授業・演習では、記述解答の書き方について、答案添削の現場からいろいろ教えていただいているようですね。

 西大和の国語科共有データにも、東進の京大模試の採点基準シートがあったかな、と思います★(いま手元にデータがないので、探し当てしだいこの記事のここ★に近々にリンクを貼ってアップロードしますね)。
 まぁ詳しいこと。採点者もエビデンスあって1、2点削っていくわけですから、入試本番に向けて間違いなく改善すべきところでぐうの音も出ません。細かいところでなけなしの部分点がさらに引かれていくのはもったいないのでよく見ておきましょう。

 ただ、ここでいうところの「部分点の集めかた」つまり「解答要素の計上のしかた」は本当に大丈夫なのか、そこが問題なわけです。この記事はそれについて説明しておきます。

【お便りコーナー】です。

【A】
先生が居なくなって、よく高2の間にもっとやっとけば〜…という声をよく聞きます。特に皆レトリックの打ち方(exも怪しい?)が分からない、自分では自信が持てないそうです。


【B】
だからこそついて行って理解した時必ず受からせてくれるであろう武富先生(洗脳されてるだけかもですが笑)について行きたいのは山々ですが、いろんな距離が遠いかつ、それを活かしたとしても正当に?評価されない(加点ポイントに入っていないため点数が伸びない)という怖さがあります。
「①どうしてこの傍線部の設問でこの要素が必要なのか」であったり、「②文章に載っていなくて、先生の解釈が少し入っているのでは?」であったり… 特に1つ目ですかね…
例えば②でいうと「ここの◯段落(のこの部分)には〜〜と書いています。」の〜〜部分「え、文章に書いてる? まとめはったんかな?」とかいう場面がしばしばあったり、①でいうとよく「このabc要素をまとめて書けばこの解答が書ける」って仰っていましたが「どうしてそのabcが必要なのか」であったり、「abcが必要と言われて書くことはできるけど、初見で出来る気がしない」って思った記憶が多いです笑

せつないお話ですよねー。私にもやむなき事情があったとはいえ、受験直前で姿をくらますというのは本当に不誠実なことで申し訳なかったと思います。

 まず【A】のお悩みについてですが、これは前の記事「【お便りコーナー】②」と、「07年度 超難問 全体読解のおさらい(重要)」を読んでください。

 前回は「戦略」として、君たちを総司令官に見立てて簡潔に書きましたが、こんどは「戦術」「レシピ」として現場の兵士にも、バイトの調理スタッフにも届くようにまとめてみました。

[ 本文読解 具体的な最初の作業のまとめ ]
1.
「読解上の目印として虚心に(ex)を振りまくり、それによって論説文の主旨が推移する範囲を最初の2、3分で見渡す」という優先されるべき大きな定理が存在するという話でしたね(前記事「07年度(重要)」参照)。あなたにとってもその辺のおじさんおばさんにも見知らぬ情報の紹介、それが(ex)です。感じたらそれは(ex)、で大丈夫。とにかく本文に飲み込まれる前に印をつけること。
 この目印の前後のことばから命題、主張が導かれるというところまでは、開成高校の先生の「現代文標準問題精講」にも載っている「賢い受験生の常識」だが、主張の導出は時間を活用する上では設問を解くさいまで残しておいて大丈夫だと思います。

2.
 その次には「ディスり構文の分布(=筆者の望まない理屈の渋滞状況の分布)を見て、筆者本人の論理展開がどう展開するかを同時に見渡す」という手順が良いでしょうね。今年度の演習でいくと、2013年度『ランボーの詩の翻訳』なんかが典型的ですね。「じゃ何なのさ?」と割り切ってくれれば、文章中盤以降にその答えがあります。口悪いですけど、ディスり対策なんて現存の参考書にはどこにも載っていないから、ここまでの手順12だけで本試験受験者全体の上半分に入れると断言できます。

3.
 で、〈レトリック〉と◎論拠◎に細かい読解をしていくのはそのあとにやる作業だと考えてもらっていいとおもいます。「意味段落」という言葉を使う先生の指導について言うなら、意味段落を分割していくのはこの開始4分以降の作業です。かならず最初2つの作業を優先してください
 細かい読解でディスコースマーカーをつけていくといっても、ざっくりで構いません。誰が見ても明らかな比喩表現には〈r〉をつけつつ、論拠が繋がっているところ(因果関係や、仮定条件による状況の絞り込み)には必ず目印を入れます。要するに、あざとい用語には#ハッシュタグを付けて、目の前にある論理の連鎖には連結の線を引くということです。

4.
 その次にやることが、伏線的・離散的な内容の関連を文章全体から(=自分が勝手に定義した意味段落(笑)を乗り越えて)探す、という作業かと思います。つまり〈r レトリック #あざとい〉や、目の前に見える◎論拠={〝前提条件(定義)〟〝仮定条件(議論を限定する)〟〝原因・手段(変化の作用主となる)〟}を、本文全体もしくは別の話題のまとまりから探すのです。
 論拠が誠実に論理の道筋を目の前で示しているときは、細かいレトリックの分析は必要ありません。しかしながら2019年度「科学と非科学のはざまで」には、文章前半で語られながらも後半にも結論にも全く関係しない論拠が多数存在して繋がりがありません。だからこの19年度というのは論拠の読解をいったん放棄して、〈レトリック〉にからみそうな〈レトリックみたいなもの〉を、この比喩はイコール関係なのか対比関係なのか包含関係なのかを確かめながらいちいちいちいち読まなければならない、レトリックの沼地にみんな苦しまねばならなかったのです。

 以上、具体的手順としてもこのくらいかと思います。高2の授業まではとりあえずテクニックとして定着徹底を目指した話しかしてきませんでしたので、「いざ自分がやるとなるとどうすればよいか不安です」と思うのは自然なことです。これは、私が急に退職という選択をしたのが悪いのです。ここできちんと読んでもらって、自信と気概を奮い立たせてくださいね。

 さて、これによって、お便り【A】のお悩みと、お便り【B】の根本的な怖れ、悩みについて回答することができたかと思います。

 でもこの記事は「記述解答の書き方」が主旨なのです。説明はここからが本番。

 残ったポイントは、「それぞれの傍線部と設問に対して、どう解答を書くべきか」です。

 後編に続きます。

[/if-login]


コメントは受け付けていません。