さぁ、これで自分で論説文を読み解く際の戦略も戦術も見えてきましたね。
文章の論説としての主旨を述べる経路場所と、それに関連する素材の場所をこれで確認できますので、皆さん自身が分かったもん勝ち、見えたもん勝ちの状況になってきました。
ただ、戦略も戦術もなくただ右往左往しているしょうもない連中は置いておくとしても、センター以後の教育改革で発展していかなければならないのは「言語・文脈の枠を超え、自分で論理立てて考えて、それを提言していく能力」だと思います。このあたりのことについては近年の過去問を演習することでしっかり指摘していくべきところですが、第1回頂上決戦のとくに「駿台東大実戦模試」のことを考えて、「筋道の通った書きかた・書く力」の基本線について、中2、中3以来の共通認識をあらためて固めておく必要があるかと思います。
「記述解答の組み立てかた」について、記事の解決編です。
東大現代文 記述の組み立てはどうしますか【後編】 :
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下の高2高等部に知り合いがいるそうなのですが、駿台には中野芳樹先生という有名な現代文の先生がいて、これまで授業で話したこともあるかもしれませんがこの先生の思考力と分析力は本当に並外れていると思います。前回の【前編】の記事までにまとめたような、私の〝読まない〟〝チートな〟現代文読解戦略に現実味を与えてくれたのは、駿台で講習を受けたこの中野先生の詳細な分析法の存在のおかげなのではないかと思います。※分析の詳細さと戦略性の乏しさがバランス悪いので、薦めてはきませんでした。
それから廃版になって久しいのですが「現代文SOS」という昔の受験参考書の存在。おそらく駿台の中野先生の教授法に先行して、「傍線部文脈を延長して、/傍線部を文節・ブロックに区切って、/本文の該当箇所を的確に抜き出して合体させる」という解答の組み立てかたを世の中に示したのはこの「現代文SOS」という本だと思います。(二〇〇三年「霊の目」のノートに板書内容が残っていると思いますので確認してください。このあたりは全国の指導内容に合わせてあります)
こうした昔話から導きたいのは、青木先生と私とで、記述の基本となるルール自体に大きく異なるところはないということです。予備校の採点要領にはうっかり知人経由で国公立大学の採点基準が漏れたうえで盛り込まれているものもあるでしょうし、予備校は即効性の高い教え方がアピールポイントなので、記述の具体的直接的なテクニックについては、青木先生から伝授してもらうのがいちばん混乱が少ないと思います。
そのうえで、私自身が今後に向けて重要だと思う〝戦略的書き方〟のポイントをまとめると、
①[字数についての一般論]
阪大の二〇字四〇字記述の存在と、第1期の帝国大の行設定(一行一三.五〜一四㎝)からいくと、普通の一文記述に二十五〜三〇字、一つの論理関係を書くのに四〇字必要となる。そのため二行六〇字の記述においては、最大として関連する三要素を説明することが要求されうる。
※タケトミの手書き解説のPDFファイルで要素abcと振り分けているのは、関連しうる度合いの高い要素として上位3要素を挙げていることが多い。本当に関連する要素が二つしかないのなら、それだけを書いても問題ない。
②[貶し構文、曖昧構文についての一般論]
「ではなく、と違って」「確かに、だがしかし」といった二項目の曖昧な対比、逆接は、どの観点で何が良いという主張にいたる過程の中間形態に過ぎない(こんな曖昧な記述で終わらせるような論文など成立も存在もしない)。二行六〇字を二文三〇字の単純な逆接で済ませるよりは、本文の伏線などの連関から分かる同義箇所から「問われている問題の争点」を補って、関連三要素六〇字の解答のかたちに置き換えることが望ましい。(聞いてるかKY塾 怒)
③[連体修飾、連用修飾による論拠の欠損]
解答要素を連体修飾および連用修飾すると、要素間の論理関係が省略されてしまうという欠点がある。連体修飾は前提となる条件や要素間の包含関係の有無、そして連用修飾は要素と要素の間の因果関係をそれぞれ曖昧に記述してしまう構文なので、周辺に関連する論拠があれば、それらに対する説明不足が生じないように注意するべき。
④[傍線文脈の置き換えの〝落とし穴〟]
関連三要素の組み立てとして「コ系指示語の直前文脈ー指示内容ー以降の新展開の内容」という典型的な三要素の関連が何十年も出題されているが、この構文は連体修飾と連用修飾に依存することで成立するものである以上、傍線文脈をそのままにパラフレーズすると高確率で論理関係に抜け漏れが生じる。理解度の主張における論理性の欠如は厳に慎むべきなので置き換えで満足しないように要注意。
⑤[各解答要素や要素間関係の内容のまとめかた]
傍線部文脈に矛盾がないように気をつけながら、それぞれの解答要素やそれらの関係性を、別の箇所で連携する複数の文脈の言葉づかいから〝集約してまとめる〟こと。傍線部文脈に依存するだけならば、内容説明や論拠説明が出題される意味などそもそも発生しない。傍線部の構文では抜け漏れている論理関係が関連文脈では明記されたり、逆に傍線部では単独で示されている項目が、傍線部と連関する文脈から他の要素と関わる重要な論拠として特定されたりなど、傍線部のある段落や恣意的な意味段落の範囲では分からない内容が、例年争点となっている。
⑥[傍線部文脈と近傍の主張命題との関係]
傍線部文脈内部の項目と関係のない要素を、文脈間の近接度だけで関係付けない。(ex)や〈r〉による文脈の連動や対立関係をよく見て、内容的な関係の緊密性を確かめることが重要。間違っても、「なんか近くの段落にあったから」「意味段落(笑)的には同じ範囲の話だから」などという文脈間の距離の近さを当てにした安易な類推をしないように注意。
※こういう無根拠な判断で「こんなこと(伏線の指示内容)はここには書いてない」とか「この2者(別章段で対比関係/包含関係の言及あり)は文脈より同一であることは自明」とか「(別章段への伏線までひとからげにして)意味段落的にはこれで主張が全て述べられ内容が区切れ、次の新しい意味段落が始まる」みたいなことを述べるふざけた解答解説は星の数ほど存在します。それは例えて言うならチェバやメネラウスの定理を「そもそも知らない/知ってても使えない/補助線の引き方を一つしか知らない」その結果、別解も立てられず当てずっぽうで解答欄を埋めるようなもので、意味を連関させる補助線の存在を識らない、認識できないかぎりは乗り越えようのない〈知性の壁〉なのだと思います。まぁ、現代文はそもそも何するにもコストが高い教科なので、ケンカになりそうだったら関係者同士こういうことはお互い黙っているのですが、いまは君たちの最終仕上げの段階なので。
以上、だいたい戦略的記述のポイントはこれら6つで説明が済むのではないでしょうか。③④⑤は解答作成上かなり重要になってくる項目ですが、これまで高2のクラス全体授業では指摘や説明をしていないところかと思いますので、ここでしっかり学習してください。だいたいこれで、テクニックという意味でのタケトミ現代文の重要事項は一区切りするのではないかと思います。
あと、記事の補足として、問題の解答解説冊子が来たときの接しかたについて。
ここまで高三の七月の段階で分かってしまうと、〝〈知性の壁〉の向こう(下)にいる人たち〟と、〝ちゃんと読み取っている人たち〟との区別が必要になってきます。皆さんはその区別を、ひたすら謙虚に、ただしひたすら正確に行ってください。オレは出来ると思い上がっている場合でも、相手が大手予備校だからと卑屈にうろたえている場合でもありません。
河合塾も駿台予備学校も、冠模試の解答解説は意味段落ごとの内容説明をひたすら書く形式になっていますが、解答配布後には「自分が確実に読み取れていると確信のある争点を、解答解説の先生が見極められているかどうか」をまず読むようにしてください。あっさり理解して文章構成の解説にくわしく説明してくれている回もあるだろうし、まさに補助線も知らず恥丸出しの解説をしている回もあるでしょう。
このオンライン講座の演習1「予兆としての写真(オープン模試過去問の動画解説)」に関していえば、私は皆さんに河合塾の解答解説を渡していませんよね。河合の東大オープンというのは、スタッフの輪番次第ではあるんですが、ほんとうにダメなときはダメな作題なんです。あの色分けされた具体例のグループを見て、動画解説を視聴してくれたなら、どうダメなのかが分かるはずです。それを、あなたたちが自分の次のステージに進むための踏み台にして欲しいのです。もっと正確な読み方、論文を論文として正確に構成から主旨を読み取る読み方に、いま進んで欲しいのです。
また、駿台の実戦模試の解答解説に関しては、スタッフの輪番によっては先ほどのポイント⑥の誤りを盛大に犯しつづけます。ほんとに巡り合わせによる、稀にしか起こらないことなのですが、彼らの説明の方針はこうです:「東大の問題は意味段落*ごとに書かれた内容を余すことなく*出題していくのが毎年の傾向だから、問3傍線部についてはは第●意味段落の内容を要約すれば大丈夫*」。また「一二〇字記述はそれまでの設問内容のまとめを書いておけば大丈夫*。これによって問1から問4(問5)までで文章の全てを丁寧に読ませる*から、東京大学は素晴らしく教育的配慮のある大学ですね」
–––などと意味不明な解答解説がなされていたら、幸運は本試験まで貯め置きできていると思ってください。*マークのところの根拠などどこにもないのに、自分たちの指導のしかたの都合だけで予定調和的な捉え方を学生に刷り込んでいて本当に教育的に最悪なので、私個人としては腹立てて電話でクレーム突入するかもしれませんけど。
学校の教員に対する態度と同じです。学者にでも官僚にでも社長にでも成りたきゃなれちゃうような全国トップの学生が、こんな俗で雑な読解をする予備校スタッフになんか相手をするわけがない。
ただ難しいのは、君たちも私もなかなかそういう超然とした態度は取れなくて、わりと言われたことはまず受け入れちゃうことが多いのですよね・・・
さ、これであとはそれぞれの演習問題をしっかりやりこむだけです。信念持ってやっていきましょう。
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