八月を引っ越しと別件にてまるまる過ごしてしまい申し訳ありませんが、そんなタケトミが何とか誠意をもってお答えするお便りコーナーです。
全世界に公開状態にして、西大和の1組さんを想定読者にしてざっくりお届けしていきます。数日で鍵付きにしますので、1、3、4組で必要な人はすぐ読むようにしてください。
ただし、この縦書きブログサイト自体は「西大和で牧村学年および平山学年」であれば、そのメールのアカウントで「google+アカウントとして」入ることができます(ログインした足跡は残るのですが、MLとは別なのでメールで追いかけるとかプレッシャーかけるとかいうことは全くありませんので安心してください)。メーリングリストと違って読みたいときにアクセスしてくれればいいので、気軽に見てもらえたらなと思います。
【いただいた相談】
京都大学を目指す人達から、「自分達は東大を受けないからMLに参加出来ないけれど、武富先生に頼りたいことがあるから代わりに聞いて欲しい」と言われたので、以下に相談を貼っておきます。
先生お久しぶりです。
解答の字数が埋まりません。
本文全体のテーマを時間内に掴むのは中々慣れなくて、どうしても傍線部の周りをまとめただけになってしまいます。予備校の模範解答を見ると、とにかく譲歩が多いです。オープンとプレの解答を見ると、6つの設問全部に一行くらい使って否定が書いてありました(本当です。全部です。)
昔「望郷と海」と民芸の話の2つの過去問を授業でやりましたが、その時先生は「京都は字数が多いから設問で重複する内容が多く、本文全体の論旨を読み取れないと点にならない。exやrをしっかりと分析する練習がいる」と仰っていました。ところが高3になってから意味段落分けへと方針が変わって、「傍線部の言い換え」と「理由説明」を意味段落内で行うという練習ばかりで、必要な練習が出来ていません。自分一人で練習することも現代文は中々難しいと感じています。どう練習すればしっかりと密度の高い4、5行の答案がかかるようになりますか?
あと、武富先生の今年の予想も聞きたいです。どんなテーマに重点を置いて勉強すればいいと思いますか?
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[4行以上の記述における解答要素について]
少なからず高2のうちに言及したことですけれども、「京都の指定解答行数=解答要素数」これは西大和学園にいた間に過去問研究をしてきたかぎりはほぼブレない、手応えのある目安だと言えます。ですから、行が埋まらないということは、解答として有効な要素を拾ってくることができていないということだと私は思います。
ただ、ここにはそれが導く問題として二つ挙げることができるでしょう。
それは、
①直接解答要素につながる背景や論拠などの解答要素を、しっかり自信持って押さえに行っているか
②予備校の標準的で暫定的な模範解答のテンプレートから、解答要素の脈絡を読み取れているか
です。
まず①について。
時間がかかるとはいえ、〈r〉の読み取りとexのグループ分けをしさえすれば伏線は回収できます。京都大学ではそういう文章しか出題されていないと言って良いと思います(東大の問題が、ディスり構文の頻出する伏線立てが不完全で論文としてはぎこちない文章を出したがるのと比べると非常にはっきりしています)。ディスり構文が多い場合、文章を最初眺める2、3分といった結構早い段階で文中の共通のディスりを整理する必要が出てきます(ディスり構文の整頓については、高2の前期中間『モンテーニュ再読』のノートを復習すれば分かるようになっています)が、それを含めてももう授業ですでにやったこと、「民藝の美」の話などでみんなでグループワークしたことなので、自信を失わぬよう気持ちの面で粘っていけば大丈夫です。(次の記事で詳述しますが、意味段落的に読んでもある程度まで解ける文章は近年多くなっていますので、あくまで入試本番の皆さんの解法が柔軟で機敏であることが重要です)
細かい作業手順については、【お便りコーナー】本試験の解き方どうすればよいですか①〜④で説明しています。読み解き方の手順だけでよければその③の記事【お便りコーナー】本試験の解き方どうすればいいですか③ 記述解答の組み立てかた【前編】だけでいいでしょう。速く解くための手順をまとめたのはこの記事が初めてですので、テーマや伏線をつかむのに時間がかかっている人はぜひ読んでください。
阪大を受けようとしている人は、高2の後期学期でドラえもんのタイムパラドクス解釈などを扱いましたけれど、「文章が進むにつれ迷路状に枝分かれする論拠を整頓し、冒頭の論点と結論とをきちんと照らし合わせる」という作業が多く必要になると思いますので、これまた詳しくは7月の記事【お便りコーナー】③と④を読んでください。【お便りコーナー】④は、論理的に書くさいにどうするかについて特に示したものです。
これも授業内ですでに示してありますが、阪大の場合、基本的にはexのグルーピングによって「それはさておき」と話題が元に戻るポイントを先取りする手がよく使えると思います。論拠の分岐の行き止まりに混乱しないように注意してください。
ただし、こうした高2までのチートテクニックは、問題点②(予備校が受験生との一、二年の付き合いのなかで示す暫定解)とやり方において噛み合わない。これがいちばんの問題なんですよね。
正直言えば、喜多学年に配属替えになった段階で、京大対策クラスは高2までに仕上げていかないとまずいということは見えていたので、長文記述の基礎はむしろ1組のほうに「高2までに叩き込む」と意気込んで、実際に教えてきたつもりです。とりあえず西大和学園国語科の先生の誰とガチでやっても負けないところまでは、すでにやっています。
だから、この問題点②については単純にいって受験期直前のメンタルの問題でしかないといえばそうなのですが、それでも、私が無責任に職務を離れたことはどうしても問われてしかたのないことだと思います。
予備校の、京都大学の記述に対する接し方は、決してハイレベルな教え方ではないと思います。それは私が何かを見下してそう思うのではなくて、これまでに授業で言ってきたように「京大というのは、先生が教えるのを超えて理解して行くことができる、そんな西日本のトップエリートが行く大学であるから」にほかなりません。
そこを悪どく「みんなで行こう」と本気でやっていくところに、西大和の西大和たるところがあるのですが、そんな京大生よりも一般的には賢くない集団である「教育業界の大人たち」は、手堅く「なんか知らないけど得点に『なりそうな』要素」を、解答要素として掲げることになってしまうのです。それは学校であろうが、予備校であろうが、基本はおなじです。
するとどうなるかというと、
・対立する、というか否定されている要素(ディスられている項目)を「…だが、〜」で脈絡を明示させることなく受験生に書かせる、羅列させる
・「対比が重要」と受験生に思い込ませ、例えば6行記述解答の骨組みをただの敵方3行、味方3行みたいな話に矮小化させる
・むずかしい(と業界人たちが思っている)結論は「落ちる子はどうせ読めないから(河合塾小石川校舎の講師がこう言った時の怒りを、僕は忘れない)」、結論を見つけ出してそれに論拠を関連づける作業を自分では解説しない
とまぁ、…こういった傾向が出てきます。
そして、それは残念ながら「世の常」なのです。西大和とて通信添削とて、細かい骨組みまで解説したら記述添削のケアまでいかない。君たちの次の代からの共通一次テストの、国語の記述解答の採点が大問題になっていますよね。上位の大学にとっては、雑な採点基準で問題意識が下の方に合わせられてしまった学生を入試で合格採用したいなんてまったく思わないわけです。しかしながら、それを制度として「大学受験までとりあえず受けて卒業させる」流れに沿っていかないと、私も含めた「センセイ」というのは生きていけないわけですよ。膨大な書類作成あるし、卒業式は来るし浪人生は挨拶に来るし新入生準備はあるし、他校だと自動車免許取るとか言って卒業の時期に急いで大人になる準備しようとしていっぱい問題起こるし。
私のそうした流れよりやや上を目指した理想主義的な解答の組み立て方は、高2までの授業でやった通りです。手順の効率的順番は、先ほど紹介した【お便りコーナー】にある通りです。
ただここで、イメージだけざっと説明するならば、
「一般にはやらない伏線回収をexでやり」
「対立要素はちゃんとディスり構文が解決するあたりまで確認して『何が問題だから』『▲▲な●●はダメで』『◉◉な◎◎はすばらしい』にきちんと変換して」
*予備校みたいに言いがかりの譲歩で済ませないで*
「冒頭にある論点と後半の結論がつじつま合うように文中の言葉づかいをきちんとすりあわせてから」
「設問ごとにここで何をn行=n要素ぶん振り分けるか計画して」
「あとは解答要素をうまくシェアしながら、誤字がないように淡々と解答する」
ですね。
まぁ、これまでいつも言っていたことです。伏線回収もしない、対立要素の分析もしない、話題はブツ切り、結果として結論が読めるレベルの読解精度を持ちえない、そんな「なみひととおりの国語の読み解き方」に、譲歩できるわけないじゃないですか。マジで寝言言ってんじゃないよ。
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あれこれ書いていると長くなってしまいましたね。次の記事は、ご相談の二点目「京都大学が出題しそうなテーマについての傾向と対策」です。