武富です。
学習範囲の情報提供にご協力ありがとうございました。
例によって文理関係なく、国語でも課題がけっこう出ているんですね。私のこのMLやブログが負担にならないようにしたいと思います。
それで、手近なところから配信していくのですが、
2016年度東京大学第1問の、内田樹の文章の解説PDFを添付しますので読んでください。詳細のブログ記事はいつもの https://ataketomi.comに、このメールに加筆して書き進めたところで案内します。
いまは概論の、簡単なところだけ説明します。
・2016年度第1問のテーマ性
・この春もっとも出題されそうな傾向とは
・具体的な解き方(前回までの読解戦略を前提に)
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ロジカルシンキング、アクティブラーニングの流れが東京大学前期教養課程の教員たちの中で徹底されたのが、この2015年度あたりだそうです。
そして「反知性主義」についてのホーフスタッターの書籍を日本語訳して出版したのが、当時UNESCOの日本理事にもなっていた渋谷教育学園校長(全国的な学校で言うところの理事長に当たる)の田村先生ということで、
アクティブラーニングの日本での提唱者が彼であるというところからすれば、出題されるべくして出題されたテーマ、ということになるでしょう。
2015年が集団的自衛権を解釈で認めてしまうという、二人を除いた全ての憲法学者を敵に回す安倍政権の愚行の年であったということも、ほぼ同じ内容を早稲田大学でも大阪大学でも出題させることになる、「研究者の研究への態度を踏みにじる年」の話題であったことも仇となり、けっこう雑な怒りの文章が東大の第1問でも出題されてしまった、わりと記念すべき年だと言えます。
端的に言って、隔年現象レベルの大まかな傾向と対策で行くと、来春の入試の内容はレトリック以上にロジカルを重んじる方向になる可能性が高く、
センター試験の次の共通テスト(ベネッセやリクルートなど民間大手、および新規開拓の英語検定試験に口利きし、改革を主導するグループを早稲田や慶応の偉い先生に回した、いわゆる「安倍人事」)が現在進行的に破滅、崩壊的な状況にあるため、以前の記事でも言及したように「東大こそが新共通テスト以上にそのコンセプトをこれまでどおりに体現する」ことを目指す、アピールする可能性も高いのです。
加えて、センターと新共通テストの端境にいる君たちの学年の大学受験で、手痛い不祥事や、大量の不正な不合格者を出すわけにも行きませんから、
ロジカルシンキングに準拠して、ごくごく基礎的なところから出題がなされていくと思われます。
模擬試験が(残念なことにも)彼らの手にあまる多量の具体例を抱えた文章を出題するため、年度の前半はそれに対する対応を余儀なくさせられましたが、今年の後半の現代文(および、古文漢文の文系専用問題)対策は、上に述べたような論理的思考を重視した文章や設問の対策を中心に行っていくべきと考えます。
さて、内田樹のこの2016年度ですが、具体例が4つ、グルーピングすると2グループ、ex3が筆者が強く推す考え方で、筆者が否定するダメな側の具体例がex1,2-ex4の伏線を形成する、というきわめて単純な構造です。
おそらく駿台の青本の解説陣なら、駿河台大学のつての法曹人材を通じてけっこうなクオリティの解説をしているのではないでしょうか。青本東大の現代文25年をもし持っているならば、ブラッシュアップされているであろう解答解説を参照してみても良いのではないかと思います。
しかしタケトミは残念ながら7月に言及したように、頭から意味段落に断裁していく駿台の読解方法に対して、読解力のレベルの怪しさ、解法のリスクの高さ、スピードのなさに満足していないのです。
アクティブラーニングを実践してきた学生の地頭の良さと速さは、正直いって旧世代で凡才の私にはないのだけれども、以下の流れだけは押さえてください。
①「議論の前提となる問題意識=Now,We,Must」を、exのグループ分けの図式の中に「筆者が議論したい内容の囲み」として盛り込む(添付PDFの冒頭の手書き参照)
→ 「この内容だけは確実に論じたい」という課題解決型特有の「テーマの絞られた議論」にむけて、「(理念上は細かい問題が残るものの)実用上は有効な」関連付けが可能になる。
②バッドケース(=アンチのexグループ)と、本文のディスり構文との内容一致を確認
→ 本当はたくさんの論拠を互いに照らし合わせる細かい作業が求められているのだが、この作業を優先することで、論点が整理されておらず停滞している段落の論拠を、論点がはっきりした段落の論拠と関連づけることが非常に容易になり、実際の細かい論拠の集約作業を記述解答時まで後回しすることができる。
③あとは、〈r〉や論拠の読解を中心にした、7月に掲載した読解の基本戦略の内容と、その手順の把握
→ アクティブラーニングという手法を重視した出題の場合、出題される文章は、書籍の中のまだ議論を組み立てている最中の章段が出題されることがほとんどである。同種の具体例について冒頭でも途中でも手を替え品を替え論じられ、 ディスり構文は問題点を暴き出しながらも後半にならないと明確な解決はなされない。その途中にきわめて原始的な〈r 極端な表現、比喩表現〉が議論のカギとして持ち出されるが、議論の「組み立て」が実現されることがアクティブラーニングの売りである以上、2019年度入試のような〈はざま〉に絡む〈レトリック〉よりも、論拠の積み上げを求めるよりわかりやすい単純な〈r 極言、比喩〉(この2016年度でいくと〈呪い〉がそれに当たる)が議論の旗印として 出現することが多い。
④解答戦略において、「同じ論拠はまとめる」「論拠の積み上げは明確に」
→ 論理的な読み取りと記述のためには、7月に述べた「連用修飾や連体修飾による論理関係の表現漏れ」に注意しながら、「この設問には『文中のどの論拠を軸に説明すれば一番スマートな解説になるか』」について、記述をする段階で十分に練って解答する。これは上の手順の②をやるからこそ、規定時間内に自分の解答をレベルアップする余裕が出てくるので、まちがっても「自分の理解力で文章冒頭から無謀に突き進んでいく」愚行を起こさないように。「現代文と格闘する」系の予備校や参考書のフレーズは、こうした「全体の構造を概観する知恵の欠如」が招く〈特攻隊のように絶望的な自滅のリスク〉に満ちている。
ロジカルシンキング的な出題のさいの基本線は以上となります。
読解の戦略を手順まで含めてまとめていますので、基本的には「こうしたポイントを実際に自分でやってみる」が皆さんに求められていると心得てください。
なんども言いますが、全国から「自発的に賢くなってきた人たち」が集まってくる、それが東大の事実です。合格するだけならばその上を行く必要はないけれども、その集団の持つノウハウを使いこなすくらいまでにはなっておかないと受かりません。
授業以上に演習教材をプラスアルファする余裕がない人は、
私のMLやブログの、授業でもやっている分の教材だけでも、自分で手と頭を使って、しっかり解答を完成させましょう。
西大和史上、もっとも現代文がよく分かっている状態に、いまの君たちはなっています。ここで自分の頭を使って、論理力を鍛えつつ解答力を高めることが大切です。
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