大阪大学的構造把握の要約問題

 
①記述の書き方
大阪大学的構造把握の要約問題
 ※【関連記事】は、本文を読んだあとで参照してください。

 百五十字程度の本文要約(もしくは本文主旨のまとめ)や、大きなワクで三行程度(≒京大の四行程度)の説明問題もある大阪大学は、「京都大学的4~5行の説明問題」とも、東大第一問の最後の百二十字問題とも重複する部分がありますので、それらのナビページも参照してほしいのですが、阪大の特徴はそこよりもむしろ、本気で面倒くさい学術的な文章を入試でぶつけてくるというその容赦の無さにあります。

 端的に言えば、阪大の先生はご自身の研究者人生という点でも教える相手の学生の数という点でもかなりギリギリの戦いを強いられています。分野にもよりますが、予算の規模がかなり厳しいということがその状況を招いています。

 そのため、絶えず受験生に容赦のない実力勝負を要求してきます。かなりの物量、かなりの難易度の問題文をぶつけてくるという点が、他の帝国大学二期校と比べても顕著な特徴になっています。

 こちらについては、本文の全体的な枠組みを俯瞰して、絶対に各論に深入りしないという鉄則を覚えておいてください総論としてのまとめや問題提起が分かれば、穴埋め問題への対策もできるようになっていますので、文章の内容から受ける印象よりもずっと、あっさりと論点を見抜く要領の良さを受験生に要求しているということに留意してもらえるといいと思います。後述しますが、阪大はヒントを大問中に用意しているのですから、要領よくそのヒントに乗っかることが重要です。

 そのうえで、次に重要となる解き方をこのブログから示すとすると―――
【関連記事】※別タグで開きます
【お便りコーナー】京大阪大の入試問題についての解き方対策あれこれ①(長文記述の解答要素について)
【お便りコーナー】京大阪大の入試問題についての解き方対策あれこれ②(今年はどんなテーマが出るだろうか)
このあたりになるかと思います。

 筆者が読みにくい文章を書くときには、いくつかのパターンがあります。大きく言うと、①「主旨を書くために、まず〝不満な現状〟のほうを説明する文章」と、②「筆者が、論点をまだ見定めないまま書いている文章」が、よく受験では出題されます。(模試でよく出されるパターンは、直前対策なので除外します。)

 前者については、〝ディスり構文(けなす構文)〟として授業で扱ったもので読み解くのが良いでしょう。曖昧な逆接や否定の文脈は、先行する内容を批判することはできても、主張すべき論点を一言で述べるのには適していないため、それが本文主旨を説明する文脈である場合は、何度も繰り返される伏線となってくれる。だから本文の中盤以降にでてくる最後のディスりの構文に関連する最初のディスり構文に着目すれば、要領を得ない難解な文章の伏線関係を逆算することができるわけです。

 後者については、模試でよく出されるのは具体例・引用(ex)が多すぎて論点が見えない多岐亡羊パターンですが、阪大の場合は〝ちゃんと見れば後半でまとまっているのに前半だけで考えるべき情報量と理屈がパンクしそうなほど多い〟というパターンかと思います。こちらも基本は、本文後半から逆算して読んでいけばだいたい大丈夫でしょう。問題は前半の小問だけで、投げ出したくなるような細かい読みを要求されることに理性的な対応ができるかにかかっています

 阪大は学部によって国語の問題が二分されますが、文学部の場合は本文の内容じたいの深さに対して、それ以外は大問の多さによる時間との勝負において、本文の結論を見据えた出口重視の読解を心がけねばなりません。先ほどのディスり構文による伏線に気がつくことも大切ですし、穴埋め問題や最後の設問の中規模記述問題から推測することができる〝本文自体のまとめの箇所〟をはじめから探りながら読んでいくことが、実際の合否を分ける得点差を生むかと思います。

 構造把握の能力を問う問題は、本文難易度や読むべき深さという意味で東京大学の出題傾向とかぶるところも多くあるので、そちらの方も学習してもらいたいのですが、どういうパターンでテキスト後半の急所や途中の伏線について出題しているかについて過去問十数年ぶんから傾向と対策を自分なりに分析しておくことが重要かと考えます。「設問でヒントを出すから、玄人ばりにいま読み通せる人材が入ってほしい」というメッセージがそこには有ると、私はすごく感じるんですけどね。

 さて、そのうえで東大の関連記事で類似の傾向を挙げるとすると、
07年度『読書について』超難問 前回までのおさらい(重要)
【プチ演習】2005年度第1問 三木清『哲学入門』①難渋な文章ではディスりや論拠を大きく捉える ※未完記事
【プチ解説】2017年度第1問『芸術家たちの精神史一日本近代化を巡る哲学一』何だこれ…チート技総動員の文章PBL系として解く順序を最終確認しよう
 このあたりになるかと思います。それぞれ要求される解き方には違いがあり、幅広い対応が要求されているといえばそうですが、阪大の場合はこうした難渋な文章の読み解き方について設問がアシストをしてくれますので、「あっ、こうやって読むのか」というケーススタディをアシストを借りながら場数を踏んでいくことで見通しが良くなっていくことでしょう。

 『読書について』は〝後半の具体例のほうが筆者の主張に近い〟という究極にどうしようもない論点の定め方が要求される文章(後半の主張のほうが筆者の趣旨に近く、それを導くのが後半の具体例なのだからしかたがないのです)のパターンです。
 『哲学入門』については〝前半で提示された論理的な関係・構図がより高次なものとして後半で主張される論理の伏線となる〟パターンです。記事が未完なのは、言語的説明の難易度にウェイトを置く近年の東大ではあまり出題されないパターンだから、という理由から後回しにしたためなのですが、阪大の場合はこうした「論理関係の相似形」みたいな要領の良い読み取りをこのくらい高い難易度の文章で問うてくることが多くあるでしょう。

 『芸術家たちの精神史』は東大の問題としてもラスボス的な雰囲気がありますが、序盤の読みにくさが全体読解を見失わせるという意味で一度本文くらいは読んでおくことを勧めたいと思います。もちろん読みにくい序盤に終盤の論旨を支える伏線があるのですが、それをどういう工夫をして早い段階で察知できるかを考える練習を、阪大の過去問にある〝助け舟〟の分析をしながらやってみると、二、三種類の伏線の解き方に気がつくようになるとおもいます。

 大阪大学を受ける人に対して、このブログで対応できることはあまり多くないかとは思いますが、以上のようなことを念頭に置いて分かるところから解いていき、自分でそのメモを残していくという取り組みを進めていけば、作題者に問われているところで結果が出せるようになると思います。これは配点のうえではとても大きな差になりますので、侮らずにしっかりやってください。


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